このサイトは、発達障害当事者が、当事者の経験に基づいて、発達障害を解説しているサイトです。
発達障害当事者だから分かる、発達障害当事者でしか知り得ない情報を、丁寧に説明しています。
発達障害の細かい分類や、個々の詳しい説明は他のサイトに詳しいので、このページではあえて触れません。
このページでは、「発達障害とは」という疑問でこれから発達障害を学ぼうとしている人が、理解しておかなければならない、大雑把なイメージと知っておくべきことについて詳しく解説します。
ちょっと違った視点から、解説しています。従来の発達障害の初心者向け情報では、いまいちイメージをつかめなかった人が、一読してみて新たな視点を得るのに、良いでしょう。
発達障害とは
昔は、ちょっと変わった人・・・、荒っぽい人、おっとりした人、忘れっぽい人、不器用な人と見られていた人たちの一部が、発達障害という括りで診断されるようになってきました。
近年の大変化
脳科学が進歩し、これらの人が、本人の努力ではなかなか良くならない脳の問題だということが科学的にわかってきました。
また、近年の社会状況、仕事状況の急速な発展から、これらの人の社会適応困難さが明らかになってきました。
これらの人は、大人になって、いくら頑張っても企業が求める仕事水準あるいはコミュニケーション水準に達しないことから、精神に疾患を抱えたり、引きこもったりする例が増えてきました。
障害者と見なされるようになった
だから、近年はこれらの人を障害者として扱い、特別な配慮と指導を行なって、社会適応を促そうという流れになってきました。
これが発達障害です。
ちょっと変わった人を「障害者」としていいのか
でも、その人たちは相当な努力をしたのだろうか。自分も人からちょっと変わったと言われる面があったが、相当な努力で克服したのだ。
この人たちは努力・忍耐・根性が足りないだけではないだろうか。
昔はそれでみな社会適応していた厳しい社会だったのだ。最近の世の中が甘すぎるのではないだろうか。
という疑問を持つ人もいると思います。
立証されつつある
ただ、先に申しました通り、脳科学的にこれらの人たちが障害だと言うことが分かりつつある状況です。
また、診断方法も確立されつつあり、医療で診断を受けた人が発達障害者として保護・指導されることになります。
高度化する世の中
社会状況の変化を考えれば、昔のように厳しくしつければ、その人が努力の末、社会適応できる力を身につけられるレベル以上の高いスキルが求められるような世の中になってきました。
これらの点から、発達障害は近年分かってきた脳の発達段階で現れる障害と言えます。
診断書の出し過ぎ?
と言っても、精神科が診断書を出し過ぎという実態もあるだろう、と思う人もいますよね。
診断の精度の問題はあると思いますが、診断書を出しすぎという精神科医は非常にわずかです。ある程度確立された診断方法に基づき、複数証拠を集めて、診断が下されることになります。
ちょっと変わった人、は医学的に診断がつくようになってきたのです。
発達障害者の理解の仕方
自分と合わない人がいたら、すぐあいつは発達障害なのではないだろうかと判断するのは良くありません。
問題行動・問題発言を行う人がいても、疲れていたり、家庭に問題があったり、あるいは他の病気であったりする可能性もあります。
すぐにあいつは発達障害だと判断するのは良くありません。
発達障害の理解の仕方は?
では、どうすれば発達障害を理解することができるでしょう。
それは、答えを言うと、簡単には発達障害は理解できないというのが答えです。
なんじゃそりゃ、と思われるかもしれません。
複雑系化する世の中
今の社会が複雑系の様相を帯びているように、発達障害をめぐる状況も複雑系を帯びています。
本気で、発達障害を理解しようと思えば、複雑にもつれた糸を解きほぐすように、時間をかけて根気よく学んでいかなければなりません。
すぐには理解できない
もしあなたの周りに発達障害だと思われる人がいたり、あなた自身が発達障害かもしれないと思う場合は、まずすぐには発達障害は理解できないと考えるべきでしょう。
漠然と理解する
ネットで調べたり本を読んだりして、なんとなくそんな障害なんだという理解することはできます。
この「なんとなくそなんな障害なんだ」という感覚は大切で、完全には理解できないけど、あるいは、私は発達障害に関して分かってない部分が多いけど、なんとなくそんな障害があるんだ程度で止めておきます。
完全に分からないことを理解する
もちろん、完全には分かっていないんだという自覚は重要です。これがないと、発達障害当事者を誤解してしまって当人を苦しめることになります。
例えば、発達障害はうつ病などの二次障害が現れやすいのですが、うつ病はよくなったり悪化したりします。うつ病の波の調子の良い時に、元気そうだからといって仕事をたくさん与えすぎるとうつ病が再発しかねません。
自分は、発達障害を理解していると思っていたけど、二次障害なんてものがあって理解していなかったんだ、となります。
推測理解する
そして、発達障害当事者を見かけた場合は、表に現れた見た目の印象だけでなく、複雑な事情を背後に抱えているんだろう、
という、推測理解が大切です。
深く学ぶ必要のあるひとは
もちろん、自分は発達障害ではないかと思っている人や、支援者の方は、なんとなく発達障害を理解しているだけではダメで、深く学んでいくことになるでしょう。その場合も、かなりの年数かけて学び、複数の当事者と接して、理解していくことになります。
この場合は、発達障害当事者に対する、理解や対処法も少しずつわかってくることになると思います。
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最近の発達障害者のイメージ
今の時代の変化は急速です。5年くらいの前のイメージが全然通用しないといった経験はみなさんお持ちでしょう。
発達障害者に関しても、「障害者」のイメージは急速に変わってきています。
昭和のイメージでは、脳の障害というと自分では何もできない子みたいな偏見がありました。一般的に多くの人がそんなイメージを持っていたのが現実だと思います。平成になっても、まだそんなイメージが強かったと思います。
いろんなことができる発達障害者
最近の、発達障害と言われる人は、いろんなことができます。
就労支援施設では、さまざまなトレーニングが行われています。EXCELやWORLDが使いこなせ、PowerPointでプレゼンもできます。
プログラミングができる人もいます。
グループワークでは自分の意見が言えます。
みんなとディスカッションもできます。
それでも障害
それでも障害と言えるのは、不注意であったり、不器用であったり、コミュニケーションが苦手であったりして、企業側が求める結果の水準が満たせないからでしょう。
逆に言えば、企業側の求める水準がものすごく高くなってきたということも言えるでしょう。
社会が作り出す障害
障害と言っても、社会が障害を作り出していると見ることができる面はあると思います。
企業が、高い仕事水準だけ求めて、どうすれば労働者がその高い水準を達成できるかは、知恵を絞らないし、育成もしない、ただはっぱをかけるだけ、ということでたくさんの労働者が疲弊し、脱落していきます。
その脱落して行く人たちの中に発達障害者となってしまう人がいるのです。
そのような昨今の発達障害者には、従来の(脳の)障害者というイメージからはかけ離れた、ハイレベルな人材も多くいるのです。
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努力している発達障害者
最近の発達障害者は、インターネットも使いこなせる人が多いので、独力で自分の障害について調べて克服しようとしている人も多いです。
その中には、独自の習得の仕方や工夫で、表面的には障害を克服している人もいます。
無理をしている発達障害者
でも、表面的に障害を克服しているだけで、内面的にはかなり無理をしています。内面的に無理をしているのは、無理して背伸びをしている状態です。
当人の脳は相当疲れています。
このような人が、ちゃんと会社に通っていても、ある日突然無理がたたって、二次障害であるうつ病などを発症して、会社に来れなくなってしまいます。
複雑系の障害
発達障害と言っても、固定的なものではなく、本人も努力していたり、さまざまな様相を帯びてきて、接した時の印象も、現れてくる現象も様々です。
ある種、複雑系の障害と言ってもいいでしょう。
発達障害も社会も複雑系である
例えば、発達障害の子の症状は単一でなく複数の問題が現れてきます。二次障害を負っていることもあります。遺伝の影響で家族も発達障害であることもあります。そうでなくても、家族との関係が嫌悪であることもあります。職場での適応も、いろんな人とのいろんな関わりで様々な問題が生じてきます。
このように、発達障害は複雑な様相を帯びています。今の時代の社会が複雑なのはいうまでもないでしょう。
複雑系に慣れる
複雑系に対処できない、と思われる方も多いでしょう。でも、今発達障害以外でも、社会のあらゆることが複雑系の様相を帯びてきています。
複雑系に慣れなければ、生き残れないと言っても過言ではありません。
発達障害の人と関わることが、複雑系攻略の一つの訓練だと思って、取り組むことは良いことだと思います。
昭和の時代のように、画一的なやり方が通用しなくなってきました。
複雑系に対応するため、学校・職場全体の改革も必要ですし、個人レベルでも意識改革が必要です。
また、発達障害当事者も、自分の抱える複雑系の問題や、複雑系の様相を深くしている現代社会に、適応するために苦しんでいます。
みんなの課題
発達障害とは、現代社会のみんなに投げかけられた、問題提起であり、ひとりひとりが考えて解決していかなければならない問題なのだと思います。
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まとめ
発達障害とは、昔はちょっと変わった人と見られていた人が、企業の仕事水準の上昇によって脱落してくる人が増えたので、障害者として扱い、特別な配慮と指導をしていこうというものです。
ちょっと変わった人と言っても、発達障害と診断される人は、ある程度確立された診断方法に基づき診断される障害です。
発達障害は簡単には理解できない、複雑系の問題を抱えていて、ネットなどで調べても、完全には分かっていないんだという自覚を持つ必要があります。
最近の発達障害者はパソコンやディスカッションなど、すごいことができる人も多いです。社会の仕事水準が高まるに連れてあらわれてきた障害で、社会が障害を作り出しているという面があります。
発達障害者には、かなり努力している人もいます。このような人が、ちゃんと会社に通っていても、ある日突然無理がたたって、二次障害を発症して、会社に来れなくなることがあります。周りが気をつけなければならないことでしょう。
発達障害は、現代社会のみんなに投げかけられた問題提起で、ひとりひとりが考えていかなければならない。