発達/精神

大人の発達障害 診断に至るつらい壁と不安

発達障害の診断を受けているところ

はじめに

このページは、自分は発達障害なのではないかと思い、発達障害の診断を検討している人へ、役に立つ情報を提供しているページです。

診断に至るまで、および診断後のことまで、具体的にどんなことが起こるのか、どんな気持ちでいるのか、説明しています。これを知ることで、診断の不安を乗り越えたり、つらい気持とどう対処するのか知ったりすることができます。役に立つ情報も載っています。

このサイトは、発達障害当事者が運営しており、当事者しか知れない独自の情報も提供しています。発達障害の情報には専門家と呼ばれる人の情報も多いのですが、それは発達障害の人を外側から見た情報です。このサイトでは、発達障害当事者の内側から見た情報も提供しています。

このサイトの情報の正確性に関しては、細心の注意を払っておりますが、発達障害は多様で、一発達障害当事者の経験と情報収集から得られた情報のため、読む人によって意見が異なることもあります。あくまで、一当事者の経験に基づくひとつの意見であり、全ての発達障害者に適応できるものではありません。

また、少しでも疑問に感じた点は、支援センターや医師などに相談してください。

また、間違った情報がある場合は、指摘していただければ、検討の後に訂正いたします。ご連絡ください。

発達障害に気づくまで

発達障害に気づくまでには、人によっていろいろな経験があります。一例を取り上げ、気持ちの動きも取り上げながら見ていきたいと思います。

ダウンするまでのこと

子供の頃から、もしくは高校生、大学生と、なんだか自分は周りのみんなと違う、脳の働きが何かおかしいのではないかと薄々感じていた。でも、脳の働きがおかしいなんて思うのはつらい。努力が足りないだけで、頑張ればなんとかなると、無理して周りに合わせていた。

学校の勉強はなんとかなっていた。でも、家庭生活でも、学校生活でもミスが多い、遅刻する、物忘れがひどい、みんなとの雑談などコミュニケーションがうまくいかない、など人と比べておかしな点を抱えていた。

とてもつらい。地獄のような心の苦しさだ。脳の働きがおかしいなんて考えるのは地獄だ。それでも学生時代は、なんとか乗り越えた。

親や先生からも、がんばりなさいと言われて、がんばるのが当たり前だと思っていた。

大人から与えられた道から外れることなど、全く考えられなかった。だからがんばった。

しかし、それももう限界。体が、心が、言うことをきかなくなった。

ダウンする

人によって、つまづく時点は様々です。

ある日朝起きたら学校に行けなくなったという人もいるでしょうし。

大学生で、ゼミに入ってから、みんなとのコミュニケーションがうまくいかなくなったという人もいるでしょうし。

社会人になってから、ミスが連発し上司から叱責を受け続けて、つまづいたという人もいるでしょう。

しかし、皆に共通しているのは、それまでにつらい気持ちを抱えながら、がんばってきたと言うことです。

「がんばれば必ず報われる。報われないのはがんばりが足りないからだ」と言う人もいて、その言葉に苦しめられた人もいるでしょう。

「人生にはどうがんばっても報われないこともある」この現実には自分ひとりで気づかなければなりません。そのタイミングが長年がんばり続けてきて、つまづくというつらい体験の時です。

 

特に会社勤めをしているときに発達障害に気づく人はつらいでしょう。

上司からは叱責を受け、同僚からまたは取引先からクレームが連発し、職場のみんなが自分から離れていく、孤立する。

一晩寝られなくて、朝寝床から這い上がれなくなって、仕事へ行けなくなる。

つらいです。みんなに迷惑をかけ、仕事で損失を出し、自分のこれまでの長い期間のがんばりが報われない。こんなつらいことはないです。

ダウン直後

大学生の場合と、社会人の場合に分けて、見ていきます。

大学生の場合

三日くらい大学に行けなくて、仰向けになってどうしたらいいか考えてもなにも浮かばない。夜は寝れず、朝が来る。そんな日を続けていてどんどん心が追い詰められていく。俺は終わったのか。自殺が心に浮かんでくる。まだ、若いのに自殺なんてと思うのだけど選択肢がない。でも、自殺は嫌だ。

休んだらまた大学に戻れるだろう。でも大学に戻ってもまたあの苦しい生活の繰り返しだ。俺は苦しいことから逃げているだけなのか。でも、体も心も言うことをきかない。学校のことを考えただけで、余計に苦しくなる。考えるのをやめたい。

 

社会人の場合

社会人だったら、会社を休めば上司からすぐに病院へ行ってこいと言われるかもしれません。普通の病院へ行っても特に異常はありませんと言われることになります。それじゃあ、なんで休んだんだと言うことになるので、内心相当あせることになります。

そして、大学生にしても、社会人にしても、長い間ベットの中でうずくまって寝ていると、突然そういえば、発達障害というものがあるんだな、と気が付きます。どこかでなんか聞いたことがあるけど、あれって一体なんなんだろう。自分とも関係があるのかな、一回調べてみよう、と思います。

そうして、ネットで発達障害を調べることになります。

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相談をするまで

発達障害ってなんだろう。と、疑問に思って、発達障害についてネットで調べることになります。そうしたら、自分は発達障害ではないかと思い始め、調べている間に、相談窓口などがあることを知ります。そして、一度相談に行ってみようということになります。その時、自分の障害というものに対するイメージが問い直されます。

発達障害について調べる

発達障害について調べていたら、自分に当てはまることもあれば、当てはまらないこともある。家庭生活でも、学校生活でもミスが多い、遅刻する、物忘れがひどい、みんなとの雑談などコミュニケーションがうまくいかない、など人と比べておかしな点がある。

ひょっとしたら自分は発達障害なのかもしれない。けど、どの程度なら発達障害と言えるのだろうか。さらに調べていくと、発達障害者支援センターというものがあること、最終的には発達障害は医師が診断すること、などと言うことがわかってきました。

ここで、余談になるのですが、自分が発達障害かどうか判断する目安になるいくつかの情報があります。Webの情報以外に、本を読む、Youtube、テレビ番組を見る、Web上にあるチェックリストをやってみる、小学校の頃の成績表を見る、などです。

自分が発達障害かどうかの目安をつける

一度紙に自分の問題を書き出してみるのも良いでしょう。紙に書くことで、自分のことを俯瞰して客観視できるし、また、のちに相談に行ったり、診断を受けたりするときに役に立ちます。

Youtubeやテレビ番組は、発達障害の人が直接出演していて語っているので、どんな感じの人が発達障害なのか知るのに役に立ちます。

相談するところを決める

発達障害者支援センターに相談する、というのが一つの手なんですが、それ以外にも、学生なら学生相談室、社会人なら会社に相談室がある場合もありますし、都道府県にもこころの相談室があります、また市町村にも保健所の精神保健福祉課といった名称で相談窓口があることがあります。

整理すると

  • 発達障害者支援センター
  • 学生相談室(大学生)
  • 会社のメンタル相談室(社会人)
  • 都道府県のこころの相談室
  • 市町村の精神保健福祉課
  • 相談窓口に行く

いきなり医師に診断してもらいに行く人もいるかもしれませんが、そうする必要がある場合もありますが、まずは相談窓口に行ってみましょう。それまでの経緯や会社や大学のことなども相談に乗ってくれます。

相談窓口では、発達障害を診断してくれるお医者さんのリストを持っていて教えてもらえます。ただし、どこが良いお医者さんかどうかは教えてもらえません。あくまでお医者さんのリストを見せてくれるだけです。また、発達障害を見てくれるお医者さんのリストなら、ネットで調べても出てくる場合もあります。(都道府県にもよる)

 

さて、相談室に行く場合も医者に行く場合も、不安を感じると思います。相談室はどこも優しく話を聞いてくれるので、大丈夫です。医師もいろいろ話を聞いてもらえますが、医師の発達障害に関する考え方や診断のあり方は様々なので、やはり不安を感じる場合は相談室から相談に行くのが良いのではないでしょうか。

障害に対する疑問

事前に相談内容など紙に書く人もいるでしょう。自分の人生を振り返ってまとめたり、失敗したことや叱責を受けたことなど思い出して、紙にまとめます。この作業は大変つらいです。ゆっくり時間をとって、居眠りなど休憩をはさみながら作業を続けていくことをおすすめします。

こういった作業を続けながら、疑問が湧いてくることもあると思います。「障害者になるってどういうこと」「自分は障害者になるの」「障害者に対する自分のイメージってどんなの」「会社は障害を受け入れてくれるの」「障害者になった後のライフはどうなるの」

障害に対して、自分は非常に無知であったことを思い知らされます。障害に対する暗いイメージ、はたまた、がんばっている障害者のイメージ。単純な漠然としたイメージしか持っていなかった。不安を感じる。障害者に対する差別とかって本当にあるのだろうか?今の時代に。

でもそんなことは言っていられない。障害と診断されると周りから理解してもらって就労できるという説明もある。でも、障害者雇用だと給与が安いといった情報もある。いろんな情報が沢山あって考えがまとまらない。

発達障害診断中

どんな人生を歩むか

ここで、考えをまとめるため、障害と診断されなかった場合のその後の人生と、診断された場合の人生について考えてみます。合わせて発達障害グレーゾーンと言われる人の場合の人生も考えてみます。そして、最後にどんな仕事につくかということも説明いたします。

発達障害なのに診断をしない場合

発達障害の人が障害と診断されず、人生を送る場合は、つらい人生が続きます。恋愛などのライフイベントはほとんどおきず、失敗や挫折が繰り返さます。ライフイベントには恋愛以外に就職、結婚、出産など人生のお祝い事ですが、アメとムチのアメの部分が全くなく、仕事で叱責を受け続けるなどムチばかりが与えられることになります。

そうして、うつ病、不安障害、躁うつ病、統合失調症などの二次障害になりやすいです。これらの精神疾患はとても苦しい上に厄介で、家族をも巻き込み、自分の人生を破綻へと導いていくものです。病気は長期化し仕事にもつけなくなり金銭的にも苦しくなります。早期に精神科の病院にかかり服薬して治療を受けていく必要があります。

引きこもりや、ニートになる場合もあります。一度の挫折で引きこもりになってしまうこともありますし、繰り返し挫折して引きこもりになることもあります。引きこもりも長期化しやすく、年単位で時間を失うことになります。また、引きこもっていた時間は、就労の時、空白期間と見なされるため、企業から嫌がられることになります。

発達障害と診断された場合

診断された場合は、つらさが緩和されます。障害枠は給与は安いけれど、とりあえず仕事につくことはできます。二次障害などがひどくなければ仕事を続けていくこともできます。仕事に関してある程度の配慮はしてもらえます。ある程度というのは、完璧な配慮など今の時代の職場でとても難しいので、ダメージを受けるリスクはある程度あると考えた方がいいでしょう。軽減されるだけです。

診断をされた場合のライフイベントに関しては、同じ障害の仲の良いガールフレンドやボーイフレンドくらいはできる場合があります。障害支援施設や当事者会などで知り合います。同じ障害者同士なので理解し合いやすく、仲良くなりやすいです。

結婚まで行くかと言うと難しいところですが、結婚するカップルもいます。結婚した場合、子供は難しいですが、お互いに理解しあおうという努力する気持ちがあれば、困難はあるけど仲良く暮らして行くことは可能でしょう。ただし、結婚する前から二次障害が重い人は、結婚後の生活もつらいものになると思います。

グレーゾーンの場合

発達障害のグレーゾーンというものがあります。障害と健常の中間くらいで、障害とは診断されないケースです。この場合、自分で発達障害の対処法など調べて世の中を渡っていくことになります。これもつらいです。でも、ライフイベントなど起きて、結婚まで到達する人もいます。しかし、結婚生活で配偶者が自分に対してストレスを感じ、配偶者までつらい思いをさせることが多いです。

グレーゾーンに関しては、公的支援は受けれないことが多いのですが、当事者会には参加させてもらえたり、グレーゾーンの書籍が出ているのでそれで対処したりと、対策はあります。ネットにも情報があります。困難が軽減する場合もありますが、うまくいかず二次障害になる人も多く、グレーゾーンの人をどうするかということは、現在発達障害界の課題だと言えるでしょう。

グレーゾーンだけだと診断は降りないのですが、あきらめないでください。うつ病などの二次障害が起きたときに、グレーゾーンと二次障害の合わせ技で医師の診断をしてもらうということができます。発達障害の診断は降りないけど、二次障害のほうで障害の認定を受け、就労支援などを受けれて、その時に発達障害グレーゾーンと医師から言われていますといえば、配慮してもらえます。

どんな仕事につくか

次にどんな仕事につくかに関してですが、仕事は事務補助や軽作業が多いです。スキルがあって二次障害など少ない人は、プログラミングやデザインといった専門職に就く人も少数います。プログラミングやデザインを就労支援してくれるところもあります。腕に自信のある人は、こちらに挑戦するのも良いかもしれませんね。

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診断を受けた場合のまわりの反応は

次に、診断を受けた場合のまわりの反応を見てみましょう。親兄弟の反応や、会社の上司の反応、大学の対応、など、知っていたら、対策も立てやすいでしょう。

親兄弟の反応は

発達障害と診断された場合、親の反応はどのようなものでしょう。

薄々親は何かおかしいと感じていた場合が多いので、受け入れてくれる場合が多いでしょう。

子供の様子が何かおかしいと言うことに全然気づかず、努力だ根性だと視野の狭い親は、あくまで努力に向かわせようとする親もいます。そういった親でも、医師の診断を受けて障害だと証明されたと言えば、長い目で見て理解してくれるようになることが多いでしょう。

上司の反応は

一般就労していて、上司に障害と診断されたと言っても、上司は戸惑うでしょう。発達障害に関しても分からないことが多いし、どう接していいかもわかりません。場合によっては、やめてほしいと思うかもしれません。

では、どうすればいいでしょう。これは難しい問題ですね。

でも、言わなければ今までの苦しみが続くのだから、言わざるを得ませんよね。言って今の会社をやめざるを得ない状況になっても、その時とは、その時で考えるしかないでしょう。今は、発達障害者向けの就労支援などもあるので、なんとかなると思います。

大学の反応は

大学生なら、学校の反応も気になるところですね。大学によって発達障害に対する理解も対応もまちまちです。しっかり理解して対応してくれる大学もありますし、なにもしてくれないところもあります。最近は理解のある大学が増えつつあるので相談してみるのもいいでしょう。

大学のホームページを見ていると、発達障害に対する対応が載ってある大学もあります。専門のカウンセラーを置いている大学もあります。

大学の発達障害に対する理解のあるなしはともかく、学生相談室はどこの学校にもあると思うので一度相談してみるのもいいでしょう。

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最後に

診断を受けると、心の地獄は小さくなる人が多いでしょう。苦しみが完全になくなるわけではありませんが。また、自分の支援者ができることで、安心感につながるということもあります。

心の地獄は小さくなる

診断を受けるまでのその人の人生は、長くつらく心の地獄であることが多い。体ひとつ不自由なところはないのに、心の中は地獄の苦しみの状態。まわりから理解されない孤独な地獄というのもあります。

診断を受けようと決心し、実際に診断を受けるまでにいくつもの壁と不安がたくさんあります。でも、試してみる価値はあるでしょう。

診断を受けた後も、障害者就労の問題や困難は続くけど、心の地獄はだいぶ小さくなります。

自分の支援者ができる

診断を受けるまでは、自分一人で戦っていたけど、診断を受けてからは、自分を支援してくれる人ができてきます。話せる人ができます。これは、気持ちの上で大きいですし、実際に役に立つ情報を教えてくれることもあります。

一人で抱え込んでいたつらさが、小さくなって、これまでの人生とは違う、新しい一歩を踏み出し、歩み続けていくことができるでしょう。

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まとめ

・発達障害に関して、診断を受けるまでの道筋を事前に知っておくと安心。

・発達障害に気づくまでに、長い地獄の苦しみがあり、極限まで頑張って、ダウンしてしまいます。

・ダウンして、考えている時に、発達障害というものがあったな、と気づきます。そして、調べることになります。

・最初は発達障害をネットで調べることが多いですが、YouTube、テレビ番組を見て、発達障害の人がどんな感じなのかつかむことができます。

・次に、発達障害者支援センターなど、相談窓口に相談します。相談窓口は複数あります。

・障害に対する様々なイメージを思い浮かぶが、それらはいったん保留して、先の人生を考えてみるのがいい。

・発達障害なのに診断されずに人生を送るとかなりつらい人生を送ることになる。発達障害と診断されると、つらさがなくなり普通の人並みになれるわけではないが、つらさは軽減される。

・結婚などのライフイベントは、発達障害と診断されない場合より、起こりやすくなる。施設などで知り合った同じ発達障害者どうしで結婚にいたることがある。同じ発達障害者どうしなので理解し合いやすい。ただし、二次障害がひどいと、結婚生活も大変になる。

・発達障害グレーゾーンというものがあり、確定診断は降りないけど、対策や対処法はたてれる。

・発達障害と診断を受けた場合のまわりの反応を知っておけば、対策を立てることができる。

・発達障害の診断を受けると、心の地獄は緩和されるし、自分の理解者や支援者ができる。

参考サイト

【当事者が解説】大人の発達障害の診断は受けるべき?メリットや注意点を紹介|d-career

大人の発達障害検査をしに行った時の話|駒崎 弘樹 認定NPO法人フローレンス代表理事

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