発達/精神

大人の発達障害とは、発達障害当事者が独自の視点で解説する

大人へ子供がインタビュー

 このサイトは、発達障害当事者が、当事者の経験に基づいて、発達障害を解説しているサイトです。

 発達障害当事者だから分かる、発達障害当事者でしか知り得ない情報を、丁寧に説明しています。

 このページは、大人の発達障害に関心のある人、あるいは大人の発達障害当事者で、まだ発達障害に詳しくない初心者の人向けに、情報を提供しています。

 他のサイトでは、発達障害の分類とか分類に基づく詳しい解説とかしていますが、このページでは、あえてそのような情報は提供しません。

 その代わり、このページでは大人の発達障害に関する、初心者が得ておいた方が良い、新しい視点、周辺的な視点を提供します。

大人の発達障害とは

 大人の発達障害だからと言って、根本的には子供の発達障害と区別があるわけではありません。障害自体は同じ先天的なもので子供の頃から連続して続いていくものです。

 しかし、大人の発達障害は、社会との関わり、内面のあり方が、より複雑になるので、子どもの発達障害より、複雑な問題が現れやすいです。子供の頃はなんとか問題が顕在化せず乗り越えられても、大人になってうつ病などの二次障害になって現れてくることが多いです。

 このため、子供の頃は診断を受けずに、大人になってから診断を受ける人もいます。

 また、子供の頃に診断を受けていた人も、大人になってつまずくこともあります。

 このように大人の発達障害は、環境と内面との関係により、子どもの発達障害より複雑な様相を示してきます。

 さらに、大人の発達障害では、あからさまな問題行動は抑制している人が多いです。あからさまな問題行動とは、子供のころにあった多動、癇癪、失礼なことを平気で言ってしまうなどです。目立った問題行動は、本人の自助努力で抑え込んでいることが多いです。

 しかし、そこには無理をしている面があるので本人にとってはストレスの一因となっています。

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子供の発達障害と大人の発達障害の違い

 子供の発達障害は、自分の意志が未確立で、周りの親や大人が子供を主導して、成長へと導いていくことになります。周りの主導がうまくいかないと、子供がつまづいてしまいます。

 大人の発達障害は自分の意志で独立した道を歩もうとしますが、そこでつまづいてしまう人が多いです。

社会に溶け込まなければならない

 子供の間は、学校、家庭といった比較的狭い範囲で周りに合わせていればよく、そこが発達障害があれば、周りの大人が配慮するということになります。それがうまくいかないと二次障害や引きこもりになってしまいます。子供は、自ら社会に溶け込んでいく意志が未確立で、大人から言われたことを実行していることがほとんどです。

 これが、大人になると、社会に溶け込んでいく強い意志を持つようになり、同時に強い不安も生じてきます。発達障害のようなわかりにくい障害を抱えていると、より不安は強くなります。

 大人の発達障害となると、自らの意志で社会の求めるものと、自分の特性を擦り合わせなければならなくて、そこで無理すると二次障害になり、挫折すれば引きこもりになります。そして、それを防ぐためにサポートしてくれるのは、親から社会の人たちに変わっていきます。

しっかりした考えを持つ必要がある

 大人と子供の発達障害では、適応しなければならない社会の範囲も、自らの意志の強さも、大きく異なります。

 ですので、大人の発達障害は、本人の自助努力にしても、周りの配慮にしても、当事者も関係する人も共に、しっかり考えることが重要になってくるでしょう。

どうすればよい?

 どうすれば良いかということは、このブログでものちのちの記事で説明していきたいと思います。

 簡潔にいうと、子供は、周りの大人が(特に親が)子供の程度を考えて、意思を無理なく引き出すようにサポートする。大人は、不安を聞いてあげて、相手が考えを整理できるようにサポートするのが好ましいでしょう。

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やはり就労の壁が大きい

 そして、やはり大人の発達障害は就労における壁が非常に大きいです。

 学生の間はなんとか乗り越えてきた人でも、就労においてつまづくことが多いようです。

障害が顕在化する

 学生の間は、個人で完結した課題が多かったのが、社会人になってからはチームで仕事をするようになるなど、環境が変わり、より障害の特性が問題になってきます。

 また、ミスなども学生の間は許されたものが、社会人になってからはミスも許されなくなり、より厳しくなり、障害が問題になってきます。

 学生の頃は発達障害の特性が問題にならず、ちょっと変わった子ですんでいたものが、就労で障害が顕在化することが多いようです。

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あからさまな問題は抑制し、見た目は普通の人に見えることが多い

 大人の発達障害になるとあからさまな症状は少なくなります。見た目には障害がわかりにくく、ほとんどの人が見た目の印象では(話した印象でも)普通の人と変わらないことが多いです。

 あからさまな症状とは、子供のころにはあった癇癪とか多動とか、失礼なことをはっきり言うとかです。これらの症状は発達障害者が成長する過程で、独自のやり方で学習し、自分自身を矯正していることが多いです。

普通に見えるがゆえの苦しみ

 普通に見えるので、就労面接などでは気づかれずにすり抜けることが多いです。職場に入ってチームで仕事をさせてみたり、マルチタスクなど仕事の負荷がかかる状況で障害が現れてきます。

 発達障害者は、自分なりに考えて社会適応しようとします。このため、あからさまな症状は抑制しています。しかし、細かいところや複雑なところでは、我流では筋違いだったりします。また、障害ゆえにどうにもならないことがあったりして、職場で大きな負荷がかかったときに、仕事上・対人関係上のトラブルが生じてきます。

 そして、トラブルが長期にわたるとメンタル上のトラブルが生じてきます。

 

 普通に見えるがゆえに、困難を抱えるということになります。

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絶対的努力神話から障害へ

 昔は努力すればすべての人が、必ず何らかの仕事につけて活躍できるという、努力神話のような考えが社会に絶対的に根強くありました。

 しかし、脳科学の進歩により、いくら努力しても伸びない能力を持った一群の人たちがいることが分かってきました。これが発達障害です。

今の社会は余裕がない

 また、社会の側でも昔はちょっと変わった人でも受け入れる仕事があったのですが、現在では社会の余裕のなさから、そういった仕事は無くなってきています。それで、大人の社会から脱落していく人が多く出てきました。そういった人たちの中に大人の発達障害と診断される人たちがいるのです。

努力神話の時代の名残

 努力神話の世界で生きている人たちから見れば、「情けないやつだ」「ダメなやつだ」と大人の発達障害を良くない目で見がちですが、この人たちは、脳に障害があるためいくら努力しても伸びないのです。そのことが科学的にわかってきているのです。

 大人の発達障害はむしろ相当な努力をしていることが多いです。発達障害者でうつ病になる人が多いですが、うつ病になると、「心の弱いやつだ」という目で見がちですが、逆にうつ病になるくらい相当な努力をした、普通の人では考えられない努力の持ち主だと考えることもできるでしょう。

 このように大人の発達障害は、努力神話がまだ強かった時代の名残で、偏見の目で見られ苦しんでいますが、決して「ダメな人」みたいな目で見るのはやめたほうが良いでしょう。

大人の発達障害者がつぶれていく背景

 今の社会は余裕がなくなってきています。

 職場においては、人減らしのため、残留している人員に過剰な負荷がかかり、複数の仕事を並列的にこなさなければならなくなりました。このような状況で、並列処理(マルチタスク)が苦手な大人の発達障害者が社会から脱落することが増えたのです。

 また、従業員に無理な仕事を強いれば、その従業員が成長する、という思い込みがまだ日本人には根強いです。さらに、それしか、従業員を成長させる手段を上司は知らない。さらに、新しいマネジメントを学ぼうという考えも上司は持っていない。

 こういう社会環境で大人の発達障害と診断され、さらに潰れていく人が増加するのは無理のないことでしょう。

メンタル面では思春期で成長が止まっている人が多い

 これは、著者がたくさんの大人の発達障害者と接してきた印象ですが、大人の発達障害者は思春期あたりでメンタル的な成長が止まっている人が多い感じです。これは、自閉症スペクトラムの人に多いかもしれませんが。

 学習障害にしても、注意欠陥障害にしても、自閉症スペクトラムにしても、ある年齢で成長が止まってしまう障害だと考えても良いでしょう。それが、発達障害者によって成長が止まる年齢はまちまちです。ある子は小学校低学年で成長が止まる子もいるでしょう。

思春期あたりで集団生活につまづく

 それで、メンタル的には思春期あたりでまわりについて行けなくなったという子が多くいます。 

 思春期といえば特に仲間意識が芽生え始める時期で、特に異質な子は排除されやすくなるのでしょう。興味関心も大人のものに変わっていく時期で、仲間同士で刺激し合って、大人にむけて成長していく時期です。

 ここで、周りの子と異質な面がある発達障害者はみんなの輪の中に入れず、孤立していく子が多くなります。それで、メンタル的な成長も止まるのでしょう。

子供っぽく感じてしまう発達障害者も多い

 だから、定型発達の人は、大人の発達障害者と接してみたとき、内面的に幼く感じるかもしれません。

 例えば、特定の趣味だけしか関心がなかったり、ゲームやアニメなどの子供趣味では話ができるけど、スポーツ、芸能、ドラマ、対人関係、恋愛などみんなが関心を持つ分野では無関心だったりします。

 大人の発達障害者と接するときは、子供扱いしてはいけませんが、メンタル的な面でその子の興味関心に合わせてあげれば、話はしやすいと思います。その興味が子供っぽいことがあるということです。

大人社会に必死で適応しようと頑張っている

 でも、ここで大人の発達障害者は必死で大人社会に適応しようと並々ならぬ努力して苦しんでいる人が多いです。子供扱いしない方が良いです。

 ただ、お話をするときにその子の興味関心に合わせるということです。定型発達者がその子を幼く感じても、大人として接しながら、話題の興味関心をその子に合わせるというのが良いでしょう。

大人の発達障害との付き合いは超長期戦になる

 子供の発達障害は一応、十八歳までとか二十歳までとか区切りとなる目標があります。親のサポートもあるでしょう。しかし、大人の発達障害は死ぬまでの超長期戦になります。親がサポートできるのには限界があります。

 大人の発達障害は、自らの意思で支援を頼って、長期にわたって生活を営んでいけるようにすることが重要になってきます。

将来のつまづきを防ぐ

 発達障害者は、さまざまな年代で、さまざまな課題が生まれてきます。今、目の前のことしか見えない人が多いと思います。無理もないです。それで精一杯なのですから。

 しかし、さまざまな年代で生じてくる先の課題を見越して対策を打っておく、あるいは学習だけでもしておくということは、つまづきを防ぐのに大いに役に立つことでしょう。

 超長期戦を乗り越えるにはこのような知恵が必要です。

 

まとめ

 大人の発達障害は、環境と内面との関係により、子供の発達障害より複雑な様相を示してきて、つまづくことも多くなる。

 子供の発達障害は、自分の意志が未確立。大人の発達障害は自分の意志で独立した道を歩もうとするが、そこでつまづいてしまう。そして、つまづきをサポートしてくれるのは、親から社会の人たちへと変わっていきます。

 大人の発達障害は就労における壁が非常に大きい。学生の間は、個人で完結した課題が多かったのが、社会人になってからはチームで仕事をするようになるなど、環境が変わり、より障害の特性が問題になってきます。

 大人の発達障害者は、あからさまな問題は抑制し、見た目は普通に見えることが多い。職場に入ってチームで仕事をさせてみたり、マルチタスクなど仕事の負荷がかかる状況で障害が現れてくる。普通に見えるがゆえに、困難を抱える。

 努力すれば必ずうまくいくはず、という絶対的な努力神話が昔から社会にはあった。今、いくら努力しても伸びない能力を持った一群の人たちがいることがわかってきた。これが発達障害です。発達障害者は、努力神話がまだ強かった時代の名残で「あいつはダメなやつ」みたいな目で見るのはやめたほうが良いでしょう。

 社会に余裕がなくなったため、発達障害と診断され、さらに潰れていく人が増加するという面は大きい。

 発達障害者は、メンタル的には思春期あたりでまわりについて行けなくなる子が多くいる。大人の発達障害者と接するときは、幼く感じても子供扱いしてはいけませんが、メンタル的な面でその子の興味関心に合わせてあげれば、話はしやすい。

 大人の発達障害者は、障害との付き合いが超長期戦になる。自らの意思で支援を頼って、長期にわたって生活を営んでいけるようにすることが重要になる。さまざまな年代で生じる、先の課題を見越して対策を打っておくことは、つまづきを防ぐのに大いに役に立つ。

参考サイト

大人の発達障害とは?症状の特徴や周囲からの接し方や対応について atGP しごとLABO

お役立ち情報 情報ものしり帖 大人の発達障害 毎日新聞生活報道部

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